花粉症のシーズンには非常に混み合う耳鼻科。
花粉症持ちなら誰でも経験したことがありますよね。
「そりゃあ繁忙期だから混むでしょ。」
仰る通り。
その通りなんですが、その理由をもう少し掘り下げて考えたいと思います。
1.花粉症の患者数は日本にどれくらいいるのか
これに関しては残念ながら正確なデータが無いらしく、いくつかweb上で見つけたデータを列挙すると、
都内3区市を対象としたアンケート調査と花粉症検診の結果から推計した都内(島しょ地域を除く)のスギ花粉症推定有病率※1は48.8%
引用元:花粉症患者実態調査(平成28年度)概要版 東京都
※1必ずしも治療や対策を要する患者 の割合ではなく、日常生活に支障がない軽症の方も含んだ有病率
ウェザーニュースでは、スギ・ヒノキの花粉飛散が少ないとされる北海道と沖縄を除く全国を対象に、2019年3月15日〜16日に聞き取り調査を実施。9361人の回答を集計したところ、58%は花粉症の自覚があることが判明しました。
引用元:ウェザーニュース
URL: https://weathernews.jp/s/topics/201903/180165/
その他、少し古い調査では、
スギ花粉症の有症率の全国平均16.2%
(中村ら:アレルギー性鼻炎の全国疫学調査-全国耳鼻咽喉科医および家族を対象にして- , 2002)
スギ花粉症の有症率26.5%
(馬場廣太郎、中江公裕:鼻アレルギーの全国疫学調査2008(1998年との比較)―耳鼻咽喉科医およびその家族を対象として―, 2008)
といったデータが存在するようですね。
そこで今回は下記のように想定してみる事としました。
・乳幼児や重篤な入院患者、海外長期出張者等々を勘案して耳鼻科に行く可能性がある母数をザックリ1億人とする。
・有症率の全国平均は上記の平均で37%とする。
※直近の有症率の全国平均はもっと高い気がするが、症状が軽かったり、病院に行かない人で市販薬で済ませる人もいるのでこの値とした。
以上から、計算して日本国内に存在し、病院を訪問する人数の合計は、
1億人 × 37% = 3700万人
となります。
2.日本全国に耳鼻科の数はどれくらいあるのか
これについては、厚生労働省が統計データを出していたので、その数値を利用します。
厚生統計要覧(平成30年度)第2編保健衛生第2章医療
ー第2-33表「一般病院数(重複計上),診療科目別」
ー第2-34表「一般診療所数・歯科診療所数(重複計上),診療科目別」
から耳鼻咽喉科の数は
一般病院数:1996
一般診療所数:5828
合計:7824
であることがわかります。
一般病院:
医師又は歯科医師が医業又は歯科医業を行う場所であって、患者 20 人以上の入院施設を有するものをいう。
一般診療所:
医師又は歯科医師が医業又は歯科医業を行う場所(歯科医業のみは除く。)であって、患者の入院施設を有しないもの又は患者 19 人以下の入院施設を有するものをいう。
3.病院1ヵ所あたりのスギ花粉症患者数
では上記の数字から、病院1ヵ所あたりの患者数を求めると、
3700万人 ÷ 7824 ≒ 3834人
となります。
つまり、スギの飛散時期になると3834人が一斉に耳鼻科へやって来る事になるわけですね。
4.1日あたり、1時間当たりの患者数は?
もう少し計算してみましょう。
仮に、全患者がスギ花粉が始まる2月頭を挟んで、3週間以内に病院へ一度だけ来るとすると、1日あたりの患者数は、
3834人 ÷ 18日(日曜除く) = 213人/日
となる。
病院が1日8時間の営業だとして(実際は土曜日が半日だったり水曜や木曜が休診だったりするがとりあえず無視)、
213人 ÷ 8時間 ≒ 27人/時間
ということは一人あたりの診療時間は、
60分 ÷ 27人 ≒ 2.2分!
患者一人につき2.2分で捌かないと捌き切れない事になります。
そりゃ無理だ(笑)
カルテの記入や診察室への移動も含めて一人あたり10分くらいが限界ではないかと・・・。
勝手にそう想定すると、1ヵ所の病院で1日に診療に可能な人数は、
8時間(=640分) ÷ 10分/人 = 64人
必要量(213人)の3割に満たない事になる。
これじゃあ混雑しますよね。
しかも実際は花粉症以外の患者も来院するだろうし、花粉症患者も少なくともシーズンに2、3回来院する事になるハズ。
5.まとめ
如何だったでしょうか。
何というか、この数字を見ると(もちろん仮定の仮定の話ではあるものの)物理的に無理な数字ですよね。
そりゃ大変ですよ。
耳鼻科の先生始めスタッフの皆さんには感謝しかないです、ホント。
この数字を見れば、長い待ち時間でイライラしてる人も我慢できるのではないかと・・・
ちなみに、内科は一般診療所だけで63994ヵ所(耳鼻科は合わせても7824ヵ所)あります。
実は内科でも花粉症に対応できる病院はあるんですよね。
花粉症に対応できるのは一部に限られるとは言え、1割強が対応できればキャパが倍になる計算ですね。
別記事では「単に混雑を回避したいから」という理由で内科でも診てもらえるという事を書いたんですが、私のように花粉症に慣れていて、飲む薬も決まっているような人は積極的に内科を利用するのが良いのかも。
こうも数字でハッキリ出ると考えさせられますね。
ではまた。
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